ウソでも聞きたい帰国の知らせ~エイプリルフールに書く友人への手紙~

幼なじみのカメちゃんは、だんなさんの仕事のために海外にいます。

数年で戻ってくるとは聞いているのですが、幼いころからずっと一緒に学校に通った友達。

結婚して子どもができても会っていたから、力強く私たちを遠ざける距離がこたえます。

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たとえ近くに住んでいたとしても、ひんぱんに会えはしないのですが、絶対的に会えないと会いたくなるのが人情。

この4月、一番聞きたいウソはなんだろうと考えたとき、まっさきに考えたのがカメちゃんの帰国でした。

あえてこの日に手紙を届けるなら、やさしい嘘の話がしたい。

冗談のようなウソに笑うのもいいけれど、エイプリルフールにだって、誰かに本物の気持ちを伝えたいのです。

 

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帰国の知らせが待ちどおしい

カメちゃん

日本では桜が咲きはじめました。

こちらでは新しい学年がはじまります。

中学校や高校の桜、きれいだったよね。

カメちゃんと正門の桜の前で写真を撮ったことを思い出しました。

あのころの私たちは携帯電話なんて持ってなくて、持ち歩いていたのは使い捨てカメラ。

どんなふうに写っているかも確かめられない写真を、あちこちで撮っていたことを覚えています。

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春休み明け、久しぶりの登校の疲れや新しいクラスの不安が混じったあいまいな表情で、笑顔もなく桜の前に立っていた。

あのころから、カメちゃんといればいつも安心していられました。

情けなくてカッコわるくても、ずっと一緒にいてくれた。

だから少し不安なことがあると、いつもカメちゃんに会いたいなと思っています。

年度がかわるといっても、4月1日はまだ春休み。

のんびりとした時間の中、エイプリルフールという平和な言葉が頭をよぎっています。

カメちゃん、ウソでもいいから「帰るよ。」って言ってくれたらいいのに。

本当はそんなふうに思っています。

家族がバラバラなんていやだからと、一大決心をして海外で暮らすことを決めたカメちゃんは応援したい。

どこにいたっていつもどおり話せているし、私たちは昔と全然かわらない。

それでもやっぱり、帰ってきてほしいなと思っています。

前みたいに、「週末会いに行こうかな。」って、気楽に思えるところにいてほしい。

たとえめったに会えなくても、カメちゃんが近くにいてくれることで、私はずいぶん支えられていたんだと実感しています。

ウソをついても許されるお気楽な日に、なんだか柄にもない弱音。

それでもやっぱり私が一番ききたいウソは、カメちゃんが帰ってきてくれることです。

ウソじゃなくても、いいんだけどさ。

 

ハナコ

 

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ウソつきとホンネ

つきあいの長いカメちゃんには本気でウソをついたことも、適当なことを言って何かをごまかしたこともあります。

カメちゃんもまた、私に気をつかったり、気まずさを隠すため、ウソをついていたことはありました。

でもいつもお互いに、「居心地のいい関係」を守るため、ウソをついていたような気がします。

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いいことも悪いことも、いろんな波があったけれど、カメちゃんとはずっとこのままでいたい。

そのために重ねたウソがありました。

カメちゃんだって、同じだったと思います。

だから。

一瞬でいいから、いつでもカメちゃんは近くにいると思わせてくれるようなウソが聞きたい。

もちろん最後に書いたように、本当ならなおいいのです。

ウソを待ちながら漏れる本音も、カメちゃんにならバレていい。

それくらい私は、カメちゃんが好きだよ。

これはもちろん、ウソじゃないよ。

 

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