留守番ありがとう〜娘の小さな成長の記録〜
良くも悪くも、私は娘2人をなかなか手元から離すことができず、誰かに預けることも、留守番させることもほとんどありませんでした。
ただ、子どもたちが体調を崩して1日中家にいる時は、ほんの少し、留守番させることがありました。
長女関しては、あまり私に執着しないタイプだったので「平気だろう」と思っていました。
けれど体調が悪いとふいに寂しくなることもあったようで、私が広告の裏に書いた置き手紙をずっと捨てずに持っていたり、そっと窓からのぞいて待っていたりしました。
だからできるだけ家にいてやらなければ、と思っていたのですが、彼女はいつの間にか、ひとつ階段を上がったようです。
先日、インフルエンザで久しぶりに学校を休んだ時、特に無理をしているふうでもなく、「お母さん、今日ジムじゃないの?行ってくれば?」と一言。
「インフルエンザ脳症」という怖い言葉が脳裏をよぎりながらも、熱は上がる様子なく落ち着いています。
拍子抜けしながらジムへ行き、いつも通りのメニューをこなして帰宅しました。
その間特に連絡はなく、帰っても「平気だった」とのこと。
「前はさびしいからイヤって言ってたのにね」という私の言葉にも、「前はね」と笑いました。
さびしいと言って欲しかったわけではありません。
自立し、母親の予定まで気遣うようになった彼女の、お荷物になるような親になりたくない、と決意を新たにしました。
これからどんどん私を必要としなくなる彼女にできることはひとつ。
私も彼女から自立すること。
けれど助けを求めた時は、必ずそばにいること。
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ひとつ、大人になった日の話
ほのか
ささやかなお話です。
あなたが大人になったら、きっと私も忘れてしまう。
だから手紙を書きました。
ある日の短い、留守番の話。
あなたはあまり病気をしない子で、最後に学校を休んだのはもう、1年以上も前でした。
小学3年生の時だった。
妹ののどかを幼稚園にお迎えにいかなければならず、30分くらい、留守番をしてもらうことにしました。
熱は下がって、体調も落ち着いていました。
短時間の留守番は慣れっこのはず。
「もう少ししたら、のどかのお迎えに行ってくるね」
さりげなくかけた言葉に、「1人でいるの、さびしいな」と意外な答えが帰ってきました。
いつもの気丈なあなたからは予想できなかった。
とは言っても病気のあなたを連れ出すわけにもいかず、のどかを迎えに行かないわけにもいきません。
眠ったことを見届け、食べるものとメッセージを残して出かけました。
そして、できるだけ早く帰りました。
目が覚めてお腹を満たしたあなたは、さびしそうな顔もせず留守番していました。
けれど「さびしくて、ちょっと泣いちゃった」と言いました。
作っておいたサンドイッチをたいらげていたあたり、空腹がさびしさに輪をかけたのでしょう。
お腹が満たされたことで、気を取り直したようでした。
それでも机の透明なシートの下に、ずっと捨てずにとってある私からの「すぐ帰ってくるからね」のメッセージを見るたび、まだ1人にはさせたくないな、と思っていました。
だから今回、調子が悪くなって早退し、これから熱が上がるかもしれないという不安定な状態の中、サラリと私に「今日、ジム行く日だよね?」と言ったあなたの顔を、私はじっと観察してしまいました。
無理しているのだろうか?
行って欲しくないから、確認しているのだろうか?
あなたの表情は、どちらでもないことを語っていました。
「私は寝てるから、行っても大丈夫だよ」と。
とても拍子抜けして、ポカンとしたまま私は出かけました。
ジムでトレーニングをしてる最中も、「本当に大丈夫だろうか?」と考えていました。
でも本当に、あなたは大丈夫でした。
良く考えたら、普通のことなのかもしれません。
寂しいと泣いていた時から1年以上も時間はたち、身長だって10㎝以上も伸びました。
できるようになって、当たり前だよね。
大きくなったんだな、と嬉しく思いました。
でも。
私の中にはまだ、1人で目を覚まし、涙をこぼすあなたがいます。
あなたはもう、あの頃に戻ることはないし、泣いたことだってすぐに忘れてしまうでしょう。
でも私は忘れない。
体が大きくなったり、経験をつんだことでカバーしているけれど、あなたの心には何かのきっかけでさびしいと感じる部分があって、きっとそれはずっとなくなったりしない。
悪いものではないのです。
あなたの優しさを生み出す源なのかもしれません。
だから、私だけが知っているそのさびしさが顔を出した時は、これからもずっと、私がうめてあげたいと思う。
これから行動範囲が広がるあなたのそばに、いてあげることは無理かもしれません。
だからあの時と同じように、手紙や、空腹を満たす食べ物で。
あるいは、みんなで守り、支えあった家族の誰かで。
あなたが成長していくことは、とても嬉しい。
けどいつまでも、いつだって、手を離したりはしません。
熱を出したあの日のように。
長女のほのか10歳の夏に お母さんより
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言い訳の後だしメッセージ
子どもが赤ちゃんの頃からつき合いのある友人は、私が長女にとても厳しいことを知っています。
「求めるものが高すぎる」と、よく言われてきました。
事実その通り、返す言葉もありません。
けれど私は長女に、私の理想の何かに、なって欲しいわけではありませんでした。
いつか、彼女が本気で何かをしたいと思った時、自分でその夢をつかめるだけの力をつけてほしかった。
幼い頃から、親の評価だけでは満足した顔をしなかった彼女が幸せをつかむためには、その力が必要だと思っていたのです。
自立心の旺盛な長女は、その通り、なんでも自分でやるようになりました。
「結果よかった」と、思ってはいます。
けれど、幼い時にワガママのひとつも聞いてやらなかったことは、酷だったな、と思うことがあります。
だからこれは後出しの言い訳メッセージ。
厳しかったけど、こんなに思っていたんだよ、という、私の自己満足です。
これからの娘との関係性によっては、笑って話せるようになるかもしれません。
けど私は口よりも文章の方が饒舌です。
「お母さん、本当に私のこと好きだったのかな?」なんて思う時が来たら、読んでね、のメッセージです。
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