雨宿りの渡り鳥、おばあちゃんへの手紙はまだ?~初冬の雨に~

冬枯れの景色の中に、あたたかなオレンジ。

ジョウビタキの小さな姿が見えると、冬なんだなぁの思いとともに、寒さの中でも強く生きる生命に励まされる気持ちになります。

けれど最近は雨が多く、鳥たちもじっと雨宿り。

そんな姿を見ると、遠くに住む祖母のことが気になりました。

降り続く雨に、ますます外の世界と切り離されたような気持ちになっていないか心配です。

雨が上がったら、鳥たちは柔らかな姿でこの手紙を届けてくれるでしょうか。

 

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渡り鳥の郵便屋さん、ごほうびはナナカマドがいいね

おばあちゃん

雨が多いね。

お買い物には困っていませんか?

濡れると冷えるから、雨の日はお出かけしないかもしれないなと思っていました。

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最近姿を見るようになったジョウビタキも、雨の日はおとなしく木の下で雨宿りしています。

遠い北の国から飛んで来れるくらいだから、私の手紙をおばあちゃんのところに届けてもうらうことだってできそうだと思っていたけれど、なかなか飛び出せないでいるみたい。

雨が上がったら、お願いしてみようかな。

昔おばあちゃんの家に泊まった次の日、仕事に出るおばあちゃんと冬の朝を歩きながら、冬鳥が来てるねって話したことを思い出しました。

私はあの頃高校生。

おばあちゃんの家に泊まりに行くときも参考書を抱えて、さよならした後向かう先は模試の試験会場。

気持ちの晴れない週末に、気分転換がしたくて出かけた時でした。

空気がとても冷たくて、景色はすっかり冬枯れて、楽しい時間は終わってしまった。

そんな気持ちでバス停までの道を歩いていた時、おばあちゃんが教えてくれたのが冬鳥の鳴き声でした。

学校で習う知識はこれでもかと頭に詰め込まれていたくせに、日本の野鳥はスズメとハトと、カラスしか知らなかった私。

こんなかわいい鳥がいるんだと、空を見上げて優しい気持ちになりました。

丸い体にオレンジの毛があって、とても暖かそうだった。

きっと手に抱いたら、体温が伝わって来るだろうと思ったよ。

すぐにバスが来て、通勤の混雑に空も見えなくなったけど、鳥はその日の私に力をくれました。

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試験の結果は忘れてしまったけど、気持ちが晴れ晴れしたことはよく覚えています。

おばあちゃんの家のベランダからも、鳥たちが見えますか?

ナナカマドの実はもう少し寒くならないと、おいしくならないんだって。

雨のたびに少しずつ気温が下がって、木の実がまっ赤に熟したら、きっと鳥たちは元気に飛び始めるでしょう。

いい季節なんだよって、教えてくれているのかもしれない。

高校生の私の世界が、とても明るくなったように。

街は少しずつ、クリスマスの準備を始めています。

見ているだけで気持ちがウキウキしました。

だから雨が上がったら、またお出かけを楽しんで下さいね。

飾りはとてもきれいだけど、上ばかり見ていると転ぶから、足元には気をつけてね。

 

ハナコ

 

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逃げ場であり、よりどころでもあった場所

祖母の家は実家と同じ市内にあったので、ハナコが就職して家を出るまでは、一泊で泊りに行くこともたびたびありました。

特に高校受験や大学受験の時期になると、学校と家との淡々とした往復、どちらにいてもひたすら机に向かう毎日に息がつまり、息抜きという名目で逃げ出していたのを覚えています。

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ただ試験が近づくにつれ、祖母の家でも勉強から逃げるわけにはいかなくなりました。

それでもいつもと違う場所に気分が変わりました。

例え次の日が模試で、一日中会場に缶詰めになったとしてもです。

参考書の世界は灰色で、試験会場は無機質な四角。

さすがに当日の朝は気が滅入りましたが、そんな時に祖母が教えてくれたのが冬鳥でした。

小さな体に感じた大きな力に、私も必ずこの壁を乗り越えて、自分の好きな場所で生きて行こうと決めました。

すでに寒い時期が来ていたということは、年明け早々にある大きな試験の目前だったはずです。

模試の結果に一喜一憂していたハナコに、それでも外の世界はこんなにも広いと、小さな渡り鳥は教えてくれました。

長女で甘え下手なハナコにとって、祖母はいつもシェルターのような存在でした。

すでに立場は逆転し、今はハナコが祖母を気にかける側にいます。

遠方でなかなか連れ出してあげることもできないけれど、雨に降り込められた小さな世界に、少しでも外の世界のすばらしさを伝えたいと願いを込めて手紙を書きました。

 

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