寒さもずいぶん和らぎました~3月に送るお見舞いの手紙~
知人が入院したとの知らせが届いてから数か月。
季節が変わろうとしています。
寒さが体にこたえたのかと考えながら、春になったらよくなるよ、とかけた言葉。
けれど彼を苦しめる病状は、気温とともに上昇というわけにはいかず、長い闘病生活を余儀なくされそうです。
すでに退職した身とはいえ、病院の窓から見える陽ざしが明るくなり、新年度をむかえる時期がきたら、焦りや不安が心をふさぐかもしれません。
こんな時、どんな言葉をかければいいのでしょう。
入院が長くなればお見舞いの人も少なくなっているかもしれません。
病室をたずねて話をするような、そんな気持ちで手紙を書きました。
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外の光がまぶしくて
オサムおじさん
寒さもずいぶん和らぎ、窓からさしこむ光が明るくなりました。
今日はお天気よさそうだと、朝ごはんを用意しながらうれしくなります。
10年近く前に初めて妊娠して仕事をやめた春、窓から見える一日の変化に感動した記憶があります。
それまではお日さまの上がりきらない時間に家を出て、暗くなってから帰宅するという生活。
休日だとは言っても、さめきらない眠気と平日の疲れで、外の変化に気がつく余裕もありませんでした。
けれど物心ついてから初めて味わった春の一日は、それはそれは幸せで。
仕事をやめたとは言っても、つわりや妊娠による体調不良で横になっている時間が長く、自由に出歩くことはできなかったけれど。
それでも窓からの光で一日がはじまり、あふれんばかりの光があふれ、その光が少しずつ力をゆるめて夜と交代する様子を見ていると、それだけで満たされたことを覚えています。
今までこんなステキな景色を知らなかったなんて。
ゆっくりできる時間が持ててよかったなぁとしみじみ思いました。
その影響でしょうか。
結局私は子どもが生まれて、手をはなれて来ても、まだたっぷりと一日季節を味わっていられる生活に執着しています。
私が女に生まれてよかったと、一番思うことかもしれません。
だから退職後にしかそういった時間を持てない男性には、申し訳ないような、ありがたいような気持ちでいます。
おじさんだって今まで、朝から晩までお仕事だったでしょう?
おかげで私たち妻は春をながめていられるのですが、せっかくだから、今は一緒にのんびりしましょうよ、と言いたいな。
本当なら、誰もがもつ権利であるはずなのですが、働き盛りの世代には、あまり価値の感じられないものかもしれません。
でもこうして時間ができたから、私の宝物、おじさんも味わってみてください。
妊娠期間は終えたものの、花粉症の私には、今でも春はインドアで楽しむものです。
どれだけポカポカしてるよと言われても、私は外に出たくはありません。
それでも春は平等にやさしくて、淡い色したお菓子をほおばりながら、春っていいな…と思わせてくれます。
きっとね、外でお仕事している人にもそれなりに。
上着をぬぎたくなるような陽気や、いろとりどりの花が目を楽しませてくれていると思うから。
今の自分にとって、最高の春を楽しみたいなと思っています。
季節柄なのか、お気に入りの作家の小説がつづけて発売されて、とても幸せな気持ちです。
新刊は春を意識した淡い表紙が多く、本屋さんにもお花がさいているみたいです。
そんな楽しみもあって、よく書店へは足を運ぶので、気になる本があったら教えてくださいね。
お見舞いがてらにお届けします。
ハナコ
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お見舞いの手紙に使いたくない言葉
私は手紙を書くとき、できるだけ禁忌にしばられず、言葉を尽くして相手に気持ちを伝えたいと思っています。
けれど病気で苦しむ人への手紙だけは、注意して言葉を選ぶようにしています。
ケガで入院している時はいいのです。
一日も早い回復を。
元気な顔を見られるのを楽しみにしています。
そう言って励まし、回復を心待ちにする気持ちを伝えたい。
けれど先の見えない治療をつづける人に、同じ言葉はきびしく響くことがあります。
だからお見舞いの手紙に、元気になってほしいとか、回復してほしい、という言葉は使わないようにしています。
それを励みにしてくれるという自信が100%持てないときは、ポジティブな言葉は選びません。
同じ立場ではないから、わかるよ、とは言いたくない。
そう思いながら知人の顔を思いうかべていたら、主婦だから言える言葉があるな、と気がつきました。
決して楽をしているわけじゃない。
それでも社会から少し離れると、これまでとは違った目線がもてると言えるのは主婦ならでは。
社会から離れたときに感じた離脱感や不安、そんな気持ちを救ってくれた春を、ささやかにでも届けられるといいなと思っています。
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