錦秋の実りを楽しんで。秋が深まるね、お母さん。~10月11日~
二十四季節では寒露と言われ、寒さの深まるこの時期。
紅葉のとても美しい季節でもあります。
日中はポカポカ陽気の日も多く、冬の話ばかりはもったいない。
実家の母もきっと、紅葉狩りだ秋のグルメだと忙しくしているに違いありません。
都会に住み、普段の生活を存分に楽しむ母にはまさしく錦秋という言葉がぴったり。
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苦労の多かった人生の実りを収穫し、ごほうびのような期間はとにかく楽しんで欲しい。
遊び疲れてホッと一息つく夜に、楽しかった日中を思い出しながら読めるような手紙を書きました。
今年の紅葉はどこがよかった?
お母さん
気がついたら田んぼは金色で、あっという間に稲刈りの時期が来ました。
新米の季節だなんて考えながら、山を見上げたら見事な紅葉。
寒暖の差が作り出した景色のはずなのに、暖かい日差しの中で眺められるなんて、幸せだね。
きっと都会に住んでるお母さんは、山や田んぼじゃなくて、華やかなショップに並ぶ洋服や、ショーケースに並んだケーキに秋を感じているでしょう。
ここへ来るまでは、私もそうだったもの。
都会ならではの、秋の実りもまた一興。
心もお腹も満たされるね。
今年はどこの紅葉を見に行った?
駅には京都や奈良のポスターが並んで、見頃が過ぎるまであちこち出かけるつもりでいるでしょう?
たまにはこっちにも、来てくれたらいいのに。
こうして私が何度も誘っても、きっと秋の食材を使った料理教室があるから休みたくないとか、新しいおけいこを始めただとか、ジムが気持ちいい季節なんだとか、スケジュール帳をいっぱいにしているんだろうな。
お正月に帰ったら、渡月橋の紅葉や、リッツカールトンのお料理教室の写真を見せてね。
今年も予約取ったんでしょう?
ホテルのシェフが教えてくれるって、去年とても喜んでいたもの。
おせち料理には、習いたてのメニューを披露してもらえるのかな?
もう子供も独立して夫婦2人だけなのに、どうしてそんなに必死で料理の勉強しているのか不思議ではあるけれど、いつも好奇心いっぱいで元気で、おいしいものをたくさん作ってくれるお母さんの周りには、友達や家族みんなが集まってる。
これがお母さんの錦秋の実りなんだと思わずにはいられません。
お出かけする日はお弁当があるのが当たり前だと思ってた。
制服のプリーツはいつもアイロンがあたっているものだと思ってた。
布団はいつもふかふかなんだと思ってた。
当たり前を用意することが、こんなに手間がかかることだなんて、考えたことなかったよ。
それでも誰かのためにと黙って続けたことは、自分の幸せになって返って来るんだと、お母さんを見ていたら思います。
毎日私の部活が続いても、お母さんは1人で遊びに出かけたりしなかった。
秋は大会の季節なんだと思ってたの。
何年もずっと、紅葉を見る時間すらあげられなくてごめんね。
これからは、思う存分、自分のための秋を楽しんで下さい。
いっぱい邪魔しに行きます。
子供たちもお楽しみのにおいをかぎつけて、おばあちゃんちいつ行くのって、そればっかり。
家族が実るね。
お母さん、ありがとう。
遊び過ぎて体調崩したりしないように気をつけて。
うたた寝したら、体が冷えてしまうから。
たくさん出かけた日は、早くお布団に入ってね。
宵っ張りもほどほどに。
また手紙を書きます。
ハナコ
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人生のごほうびのような秋
生まれも育ちも都会の母は、街遊びがとても上手です。
ハナコよりずっとおしゃれで、精力的に出かけます。
そんな母は、とてもイキイキしています。
でも今まで、そんな母を知らなかったことを申し訳なく思います。
きっとハナコが幼い頃だって、そうしたかったに違いないからです。
商売人だった父の仕事も、順風満帆だったわけではありませんでした。
経済的にも苦労して、子供のために我慢もして、やっと今、時間を自由に使えるようになったのです。
あれだけ苦労をかけても、ハナコが母のためにしてあげられることはほとんどありません。
娘たちの元気な姿を見せるくらい。
だから一緒にすごせる時間は、出かけた時の話を聞き、一緒に笑い、丁寧に作られた料理をしっかり味わうことにしています。
何度もくり返して楽しかったことを思い出して欲しいから。
そして今、当時の母ほどではないにせよ、自由な時間の少ないハナコも紅葉やグルメを楽しみたいから。
母を通して知る秋は、人生の実りはこんなふうに訪れるのだと、パノラマに広がる山の紅葉のような眺めです。
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