サンタさんはいるよ~聖なる夜、娘に贈る枕元の手紙~
ハナコの娘は小学3年生。
幼いと思っていた彼女もついにサンタさんの存在を疑い始めました。
思い返せばハナコもそのくらいの時期、誰が枕元にプレゼントを置いてくれているのか、なんとなく察していたように思います。
それでももう、両親を傷つけたくないという気持ちも芽生える頃。
暗黙の了解ではあっても、お互いの思いやりを今後も大切にしたいから、もしかしたら最後になるかもしれない、サンタさんからの手紙を書きました。
クリスマスの夜に彼女を訪れなくなっても、彼女のサンタクロースがいなくなるわけではないのです。
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いつでもずっと。
ほのかちゃん
プレゼントをとどけに来ました。
お友だちがサンタさんなんていないって言っても、ぜったいいるんだってしんじてくれてありがとう。
ほのかちゃんのやさしい心が、サンタクロースの国までとどきました。
ほのかちゃんが生まれてはじめてのクリスマスからずっと、毎年プレゼントをとどけに来るのが楽しみだよ。
サンタさんへの手紙にかん字がたくさんふえて、お勉強をがんばっているんだなと思っていました。
クリスマスじゃなくても、サンタさんはいつも遠い国からほのかちゃんのことを見ています。
だからほのかちゃんも、大変なことがあっても、楽しいクリスマスを思い出して、いつもしあわせな気持ちでいてね。
家ぞくみんなでパーティーをしたことや、お友だちと雪遊びしたこと、プレゼントの思い出はほのかちゃんだけのたからものです。
そしていつか、ほのかちゃんの子どもにも、ステキなクリスマスのことや、サンタさんのことをおしえてあげてね。
その時はかならず、ほのかちゃんの子どもにプレゼントをとどけに来ます。
ほのかちゃんの大切な人たちと、すてきなクリスマスをすごして下さい。
メリークリスマス!
来年もまっててね。
サンタさんより。
22歳まで来てくれたサンタクロース
ハナコの両親は、ハナコが22歳で1人暮らしを始めるまで、クリスマスの日には毎年枕元にプレゼントを置いてくれました。
サンタさんがいつから意識の中で両親に変わったのかは覚えていないのですが、たとえ贈り主が誰であっても、それはとても幸せなことでした。
だから今でも信じているのです。
サンタさんはいると。
サンタさんはハナコに、クリスマスの思い出をたくさん届けてくれました。
その記憶は今でも、ハナコをとても幸せにしてくれます。
それはハナコが生きている限り、サンタさんがずっとプレゼントを届けてくれるのと同じこと。
だから娘にも、祝福を贈りたいのです。
ハナコにとってクリスマスは、宗教的な意味を持っていません。
けれどこの聖なる夜に、あなたの人生は祝福されているのだと、サンタさんからのメッセージを贈ります。
1人で目覚めた23歳の朝、枕元にプレゼントはありませんでした。
ツリーもない部屋から出勤した日。
それでもクリスマスは素晴らしいと、ハナコは心から思っていました。
記憶の中のサンタさんが、今でも見守っていてくれると感じられたからです。
娘がいつまで一緒に暮らすのかはわかりませんが、ハナコのサンタクロース道はまだまだこれから。
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身長150㎝のルール
そんなロマンのある両親、特に母なのですが、ハナコが成人した頃、実家ではクリスマスにルールができました。
身長が150㎝以内の人にはサンタクロースがプレゼントを持ってきてくれる。
そして身長160㎝以上になったらサンタさんになって150㎝以下の人にプレゼントを届けること。
ハナコの母はとても小柄で、身長は148㎝。
対するハナコはいったい誰から生まれてきたのか、身長は166㎝。
「えええええええ!?」と言いながら、バイト代でお菓子の詰まった長靴を買い、夜中に起き出してキッチンにこっそり置いていました。
普段なら絶対よろこばないはずの子ども向けのお菓子を、母はとてもよろこんでいました。
うれしかったのは嘘ではないと思う。
けれどあの時、ハナコはサンタさんになるよろこびを教わりました。
150㎝のルールがなくてもいつかは誰かのサンタさんになったのだとしても。
実家を出るまでの数年間、母のサンタさんになれてよかったなぁと思うのです。
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